多重債務で苦しいけど、持ち家を手放したくない人は個人再生の検討を その1

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意外と知られていない?個人再生

数日前にTwitterで「#私の仕事のあたりまえ」というタグでつぶやいたことが、私のツイッター歴の中で、一番反響を呼び、フォロワーさんも増えて、驚いています。

多重債務=債務整理か、最悪、破産して持ち家も何もかも失うということが、大多数の方が持つイメージで、実際に実務に関わっている自分が思うよりも知られていないんだなと実感しました。

多重債務で苦しんでいる方の中には、「持ち家があって、家を手放したくない」という想いがある人も大勢いるのでは?と思い、今までの経験を基に、この記事を書くことにしました。

この記事を書くにあたって

なるべくたくさんの方、あまり法律用語に慣れていない方にも分かりやすいように説明できたらと思いますので、かなり長くなるかと思いますが、分かりづらい部分がありましたら、Twitter上でお問い合わせいただけたらと思います。
ただ、私は弁護士ではなく事務員ですので、個々の法律相談は受けられません。その点、ご了承の上、よろしくお願いいたします。

結局、個人再生って何よ?

結論から先にざっくり言うと、

「多重債務の返済が困難な場合、その総額に応じて、一定の金額について返済免除を受けて、残りの借金を弁済する」という手続きです。
Twitterでは「持ち家を残せる」という点を強調したいがために、「住宅ローンがあっても個人再生なら家を残せるよ」としましたが、別に住宅ローンが無くても個人再生をすることはできます。

なぜ、住宅が残せるのかというと、個人再生申し立ての際に「住宅資金特別条項(住宅ローンに関しては、今まで通り返済を続けますという条項)の許可申請」を付けて申立して、住宅資金特別条項について裁判所から許可を貰い住宅ローンを払い続けるのです。

実際は、弁護士が介入通知を住宅ローンの債権者に送る時点で「個人再生申立の際には、住宅資金特別条項を付けて申し立てし、許可が下りましたら、速やかにご報告しますので、住宅ローンにつきましては、これまでどおりお支払いします」と注意書きを付けた上で通知をし、依頼者にはこれまでどおり住宅ローンの支払いを続けるように伝えます。

住宅ローンの支払いを続けていれば、抵当権者は抵当権の実行(強制的に自宅を売却する権利の実行)が出来ないのです。

じゃあ、破産手続きでは住宅ローンだけ支払うことが出来ないの?と思われるかもしれませんが、破産手続というのは、多重債務者の一定額以上の資産をお金に換えたうえで、債権者に債権額の割合に応じて配当し、それでも弁済することが出来ないからということで債務に対する免責の許可が出るのです。

なので、住宅ローンだけ支払いを続けるというのは、偏波弁済(へんぱべんさい:一部の債権者だけに弁済をする)という免責不許可事由になってしまうのです。
破産申立の最終目標は、「免責許可」を得ることなので、これでは
破産申立の意味が無くなってしまいます。

住宅ローン債権者としては、債務者が破産手続をすると決めた以上、「今まで住宅ローンは、毎月〇日に〇〇円返済と決めていましたが、破産申立するのであれば、残額を一括で返してくださいね(法律用語で「期限の利益の喪失」と言います)。返してくれないなら、強制的に回収するよ。」と抵当権を実行して強制的に競売、あるいは、債務者に任意売却を打診して、売却代金から弁済を優先的に受けるのです。

個人再生のメリット・デメリット

この制度は平成13年に始まった、比較的新しい手続きです。
破産手続きと比べて大きなメリットとなるのは、

持ち家、預貯金、保険の解約返戻金など、手持ちの資産を処分せずに、借金の金額を減額できる。よって、多重債務者の精神的負担が破産するよりは少ない。

という点です。
では、反対にデメリットというと、

ある程度の金額は原則3年間(特別な事情があれば5年間)と長期にわたって返済する必要がある。
返済する金額は、住宅ローンを除く借入総額の幅により、最低100万円(それ以下もありますが、あまり現実的ではない)~10分の1の金額か、自分の資産(預貯金、所有する車の査定額、保険の解約返戻金、有価証券、退職金の8分の1など)の合計額のどちらか多い方となるので、場合によっては月の返済額が高額になる可能性がある。
裁判所に弁済計画を認めてもらうために、余裕のある家計管理と事件終了まで月々の弁済額相当を積立てしなければならない(事件終了まで毎月家計収支表を作成し、積立用の口座に積立をしてもらいます)。
信用情報に載ってしまうので、5年~7年くらい(個々の業者にもよりますが、)クレジットカードの発行、金融機関からの融資が受けられなくなる。

という点が挙げられます。

デメリットばかりが大きいように思いますが、持ち家がある人にとっては、生活基盤の大きな変化を伴わずに経済的再生を図るという点では、何事にも代えられないことだと思います。

では、個人再生を利用できる人は?

  1. 将来的に安定した収入を得る見込みがある人。
  2. 住宅ローンを除く借入額が5000万円未満の人。

1なら、サラリーマンやパートタイマーの人、年金受給者もこれに当たります。

2は私の今までの経験では、個人再生でこんなに高額な借入がある人はいませんでした。だいたい、住宅ローンを除いて700~1200万円未満の方が多かった印象です。

個人再生での住宅ローン抜きの月額弁済額は?

個人再生を申し立てる当事者にとって一番気になるのは、「自分はいったい月にどれだけ返済する必要があるのか」という点だと思います。

まず、弁護士が相談を受ける際に聞くのが、

  • 何社(個人からの借り入れ・保証人になっているものも含む)からどれくらい借り入れがあるのか?
  • 月の世帯収入がどれくらいあるのか?
  • 預貯金、保険の解約返戻金、退職金が現時点でどれくらいあるか、自動車の有無(普通自動車か軽自動車か?年式は何年か?ローンは残っているか)、不動産の有無(オーバーローンでないか)

などを聞きます。

相談に行って、自分の資産について聞かれても、すぐには分からないこともあると思うので、細かな金額は後日になっても大丈夫です。
債務額が分かれば、最低弁済額がざっくりと分かります。

目安としては

  1. (住宅ローンを除く)債務総額100万円未満は、その金額。
  2. 債務総額100万円以上1500万円未満は、その金額の2割。
  3. 1500万円以上3000万円未満は、300万円。
  4. 3000万円以上5000万円未満は、その10分の1の金額。

ということになります。これを3年なら36、5年なら60で割ると大体の金額が出てきます。

なので、

  1. 債務総額100万円未満なら3年で約28,000円、5年で約17,000円(弁済のための振り込み手数料も必要なので、借入先の数により、もう2千円くらい多めと思った方が良いかも)。
  2. 例えば債務総額700万円なら、その2割の140万円。なので、3年なら約39,000円、5年なら約24,000円(以下、同文)。
  3. 債務総額1600万円なら300万円なので、3年で約84,000円、5年で50,000円(以下、同文)。
  4. 債務総額4500万円なら450万円なので、3年で月125,000円、5年で月75,000円(以下、同文)。

となります。

1から2あたりが、住宅ローン込みで返済していける現実的な金額ではないかと思います。

ちなみに、制度的には「返済期間は原則3年間」とありますが、世帯月収から見て住宅ローンとともに3年間で弁済するのは困難なので返済期間を5年間にして欲しいと裁判所に伝えるのと、5年の計画案で債権者から異議が出なければ、5年間で弁済することになります。

私の経験上では、3年間の方より、5年間の方が多いです。裁判所・債権者から5年計画での弁済を拒否されるということは今までにありません。

上記の金額は、あくまで債務総額から計算した弁済額なので、債務者の資産状況が明らかになり、上記の金額より高額であれば、その金額が弁済額となります。

じゃあ、債務整理・破産・個人再生とどう選択したら良いのか?

じゃあ、多重債務を抱えている場合、どのような手続きで解決を図るのが良いのか、今までの経験で思うことは、

  • 破産はしたくないし、債務の返済が無理することなく5年ほどで終わりそう、あるいは、一部の債権者(勤務先・住宅ローン・自動車ローン)には弁済したい→債務整理
  • 特に持ち家が無い(持ち家を手放しても良い)、退職金がそもそもないあったとしても少額、預貯金、保険の解約返戻金など大して資産が無い→破産申立
  • 持ち家があり手放したくない、勤続年数が長く退職金の8分の1の額が高額、保険の解約返戻金の額が高額で解約したくないなど→個人再生

という感じです。

債務整理で5年と書いたのは、この頃の傾向として、債権者が和解に応じる返済期間としては、5年(60回)が最長、それ以上になると渋られる感じです。

次回からは、実際に行う個人再生手続申立の準備についてと、裁判所に申し立てた後の事をお伝えしたいと思います。

ご覧いただき、ありがとうございました。

名村法律事務所

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